「布団に入ってもなかなか眠れない」
「夜中に目が覚めてしまう」
そんなとき、ドラッグストアで購入できる睡眠改善薬を使おうと考える方もいるのではないでしょうか。
市販の睡眠改善薬には、ロゼレムS、ドリエル、ネオデイなどがあります。
実は、これらの薬は眠りを促す仕組みが異なります。
今回は、薬の特徴や効果が現れるまでの時間、副作用などを比較しながら、どのような違いがあるのかを解説します。

市販の睡眠改善薬にはどんな種類がある?

今回紹介する薬は、大きく2種類に分けられます。
① 体内時計に働きかけるタイプ
代表的な製品:ロゼレムS
有効成分:ラメルテオン
私たちの体には、朝になると目が覚め、夜になると眠くなる「体内時計」があります。
ロゼレムSは、睡眠ホルモンであるメラトニンと同じように働き、眠りやすい状態へと導く薬です。
② アレルギー薬の眠気を利用するタイプ
代表的な製品:ドリエル、ネオデイ
有効成分:ジフェンヒドラミン塩酸塩
ジフェンヒドラミンは、もともと鼻水やくしゃみ、皮膚のかゆみなどのアレルギー症状を抑えるために使われてきた成分です。
この成分には眠気を引き起こす作用があり、睡眠改善薬ではその作用を利用しています。
ロゼレムSとドリエルの違い
| 比較項目 | ロゼレムS | ドリエル・ネオデイ |
|---|---|---|
| 有効成分 | ラメルテオン | ジフェンヒドラミン |
| 眠くなる仕組み | 体内時計に働きかける | 脳の覚醒を抑える |
| 寝つきが悪い | ○ | ○ |
| 眠りが浅い | 承認された効能ではない | ○ |
| 翌朝の眠気 | 起こる可能性あり | 起こる可能性あり |
| 連続使用 | 使用期間に制限あり | 連用しない |
※○は添付文書に効能が記載されていることを示します。効果の強さを表すものではありません。
ドリエルはアレルギー薬の副作用を利用している?
ドリエルやネオデイに含まれるジフェンヒドラミンは、もともとアレルギー症状を抑えるために使われてきた成分です。
アレルギーの薬を飲んで眠くなった経験がある方もいるのではないでしょうか。
これは、脳の中で目を覚ましておく働きをする「ヒスタミン」という物質の作用が抑えられるためです。
ドリエルは、この眠くなる作用を利用した睡眠改善薬です。
飲み続けると効かなくなる?
ジフェンヒドラミンには、繰り返し服用すると眠気が弱くなる「耐性」が生じる可能性があります。
2002年に発表された研究では、健康な男性15人にジフェンヒドラミン50mgを1日2回、4日間服用してもらいました。
その結果、初日には明らかな眠気が認められましたが、4日目には偽薬(有効成分を含まない薬)との差が認められなくなりました。
つまり、ジフェンヒドラミンの眠気を引き起こす作用は、数日で弱くなる可能性があるということです。
ただし、この研究は日中にも服用する条件で行われており、市販の睡眠改善薬を就寝前に1回使用する場合とは異なります。
そのため、「ドリエルを4日間飲むと必ず効かなくなる」というわけではありません。
ドリエルの添付文書にも、寝つきが悪いときや眠りが浅いときだけの服用にとどめ、連用しないよう記載されています。
ジフェンヒドラミンの抗コリン作用に注意!
ジフェンヒドラミンには、眠気を引き起こす作用のほかに「抗コリン作用」があります。
抗コリン作用とは、体のさまざまな働きを調節するアセチルコリンという物質の作用を抑えることです。
この作用によって、口が渇いたり、尿が出にくくなったりすることがあります。
特に注意したいのが、緑内障や前立腺肥大と診断されている方です。
緑内障の人はなぜ注意が必要?
緑内障は、目から脳へ情報を伝える視神経が障害される病気です。
ジフェンヒドラミンの抗コリン作用によって瞳孔が開き、目の中の水分の出口が狭くなる場合があります。
特に、目の中の水分の通り道がもともと狭い方では、眼圧が急激に上がる危険性があります。
ただし、緑内障にはいくつかの種類があり、すべての緑内障で同じ危険性があるわけではありません。
ドリエルの添付文書では、緑内障と診断された人は服用前に医師、薬剤師または登録販売者へ相談するよう記載されています。
緑内障の治療中の方は、自己判断で服用せず、主治医に確認しましょう。
前立腺肥大の人はなぜ注意が必要?
前立腺肥大は、前立腺が大きくなり、尿が出にくくなることがある病気です。
ジフェンヒドラミンの抗コリン作用によって膀胱の筋肉が収縮しにくくなると、さらに尿が出にくくなる可能性があります。
場合によっては、膀胱に尿がたまっているのに排尿できなくなる「尿閉」が起こることもあります。
そのため、前立腺肥大と診断されている方や、もともと尿が出にくい方は、服用前に相談する必要があります。
ロゼレムSはどれくらい寝つきを改善する?
ロゼレムSの有効成分であるラメルテオンについては、睡眠改善効果を調べた研究があります。
2007年に発表された研究では、慢性的な不眠症の成人405人を対象に、ラメルテオンと偽薬の効果を比較しました。
服用1週目に、実際に眠り始めるまでの平均時間を調べたところ、次のような結果になりました。
| 服用した薬 | 眠り始めるまでの平均時間 |
|---|---|
| 偽薬 | 47.9分 |
| ラメルテオン8mg | 32.2分 |
ラメルテオン8mgでは、偽薬と比較して平均15.7分短縮しました。
この結果から、ラメルテオンには寝つくまでの時間を短くする効果があることが示されています。
ただし、この研究は慢性的な不眠症の患者さんを対象としたものです。
市販薬のロゼレムSを使用した場合に、必ず15分程度早く眠れるという意味ではありません。
ドリエルはどれくらい寝つきを改善する?
2017年に発表された米国睡眠医学会のガイドラインでは、ジフェンヒドラミン50mgの睡眠改善効果が検討されています。
その結果、本人が感じた寝つくまでの時間は、偽薬と比較して平均2.47分短縮していました。
また、睡眠検査による測定では、平均7.89分短縮していました。
しかし、これらの結果からは、十分な睡眠改善効果があると判断できませんでした。
そのため、米国睡眠医学会は、成人の慢性的な不眠症に対してジフェンヒドラミンを使用しないことを提案しています。
ただし、これは慢性的な不眠症に対する評価です。
日本で承認されているドリエルの「一時的な不眠」に対する効能を否定するものではありません。
また、ラメルテオンとジフェンヒドラミンの研究は対象者や条件が異なるため、これらの数字だけでどちらが強く効くかを判断することはできません。
効果が現れるまでの時間と持続時間は?
薬を選ぶ際に気になるのが、どのくらいで眠くなり、どのくらい効果が続くのかという点です。
ドリエルのメーカーは、効果が現れるまで約30分~1時間、持続時間は約7時間を目安として案内しています。
一方、ロゼレムSについては、服用後何分で眠くなるか、何時間効果が続くかという具体的な時間は明示されていません。
ロゼレムSは就寝前30分以内に服用する薬ですが、これは30分後に必ず眠くなるという意味ではありません。
薬の効き方には個人差があるため、効果が現れるまでの時間だけで薬を選ぶことはできません。
翌朝の眠気はどちらが少ない?
ドリエルやネオデイは、翌朝まで眠気やだるさが残る場合があります。
これは添付文書にも記載されている注意点です。
一方、ラメルテオン8mgを用いた臨床試験では、翌朝の注意力や体の動きなどを調べた結果、明らかな悪影響は認められませんでした。
ただし、ロゼレムSにも眠気や倦怠感などの副作用があります。
そのため、ロゼレムSなら翌朝に眠気が残らないと断定することはできません。
いずれも服用後の運転や危険な機械操作には注意が必要です。
それぞれの副作用を比較
ロゼレムS
- 眠気
- めまい
- 頭痛
- 悪夢
- 吐き気
- 便秘
- 倦怠感
- 発疹、かゆみ
月経異常や乳汁分泌などにも注意が必要です。
ドリエル・ネオデイ
- 昼間の眠気
- めまい
- 頭痛
- 起床時の頭重感
- 口の渇き
- 吐き気
- 排尿困難
- 倦怠感
ジフェンヒドラミンでは、抗コリン作用による口の渇きや排尿困難にも注意が必要です。
どんな人は使えない?
ロゼレムS
次のような人は服用できません。
- 15歳未満
- 妊婦または妊娠している可能性がある人
- 本剤の成分でアレルギー症状を起こしたことがある人
- 肝臓病で治療中の人
- フルボキサミンを服用中の人
- 睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害で治療中の人
- 不眠を伴う精神疾患で治療中の人
ドリエル・ネオデイ
次のような人は服用できません。
- 15歳未満
- 妊婦または妊娠している可能性がある人
- 日常的に不眠がある人
- 不眠症と診断された人
また、ドリエルでは、緑内障、前立腺肥大、排尿困難がある人は服用前に相談するよう定められています。
ネオデイについても、購入前に製品の添付文書を確認してください。
結局、どの睡眠改善薬がいいの?
一時的に寝つきが悪い人
ロゼレムS、ドリエル、ネオデイのいずれも効能の対象です。
ただし、持病や服用している薬によっては使用できない場合があります。
一時的に眠りが浅い人
ドリエルやネオデイには「眠りが浅い」という効能が認められています。
ロゼレムSには、この効能は認められていません。
緑内障や前立腺肥大がある人
ジフェンヒドラミンには抗コリン作用があるため、特に注意が必要です。
ドリエルの添付文書では、服用前に相談するよう記載されています。
毎日のように眠れない人
市販の睡眠改善薬を使い続けるのではなく、医療機関で相談することをおすすめします。
不眠の原因には、睡眠障害やほかの病気、服用中の薬などが関係している場合があります。
まとめ

市販の睡眠改善薬には、体内時計に働きかけるロゼレムSと、アレルギー薬の眠気を利用するドリエル・ネオデイがあります。
ロゼレムSの有効成分ラメルテオンには、寝つくまでの時間を短縮した臨床試験があります。
一方、ドリエルなどに含まれるジフェンヒドラミンは、眠気への耐性が比較的早く生じる可能性が報告されています。
また、抗コリン作用による口の渇きや排尿困難にも注意が必要です。
どちらの薬にもメリット・デメリットがあり、すべての人に適した睡眠改善薬はありません。
自分の症状や持病、服用している薬などを確認し、適切なものを選ぶことが大切です。
参考文献
- エスエス製薬「ドリエル 添付文書」
https://www.ssp.co.jp/product/detail/drw/ - アリナミン製薬「ロゼレムS 製品情報」
https://rozerem-s.jp/products/ - Richardson GS, et al. Tolerance to daytime sedative effects of H1 antihistamines. Journal of Clinical Psychopharmacology. 2002;22(5):511–515.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12352276/ - Zammit G, et al. Evaluation of the efficacy and safety of ramelteon in subjects with chronic insomnia. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2007;3(5):495–504.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1978328/ - Sateia MJ, et al. Clinical Practice Guideline for the Pharmacologic Treatment of Chronic Insomnia in Adults. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2017;13(2):307–349.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5263087/
※医薬品の使用にあたっては、最新の添付文書を確認してください。
ロゼレムSの詳しい効果・副作用はこちら↓



コメント